春か、秋か、

忘れられた春。

日常に鎖が掛かり、砂漠に放り出された。

 

砂漠を一人歩いて行くと、丸い月。

慣れた目で、影を追う。

今の心情は、春の気分か、秋の気分か。

澄んだ空は影一つなく、透明で青い。

雲すら浮かばず、己というものが吸収されてしまいそうだ。

交錯する電線。小さな黒い、鳥の影。

他には何もみえない。

どこまでも広く、無が広がっている。

青い無は、街を覆って、均一で遠い。

山の端へ至ると、薄まっているのが分かる。

あの山へゆけば、逃れられるのだろうか。

僕らを置いて太陽は逃亡し、暮れゆくと満月が昇る。

あたたかみのある色彩に見守られ、なんとなくみつめ返す。

 

この日々の感情は秋の心だろうか。

次の季節を待ちながらも、春の色が混ざり込むようだ。

 

何かに感動して、涙が落ちた。

その感情の動きに、安心する。

季節の心情というものがあることに気がつく。

失われた季節があることにも気がつく。

人と関わると、感情が刺激される。

こころのうちを、わかちあったり、しまいこんだり。

そういった人間の機微が、分からなくなって悩んだり。

自然との対話だけでなく、心というものを涵養したい。

不器用なりに、もっと人を深く知りたいと思う。

 

一人になりたがっていた人間の、最近の変化である。